新潟工科大学国際交流顧問
判澤純太
日時:2012年7月26日(木)午後4時 ― 6時15分
場所:柏崎商工会議所会議室
主催:柏崎トルコ友好協会
出席者:セルゲイ・クルチ大使閣下、同夫人、同令息
オスマン・ベキヤロール一等商務参事官
ご講演(約40分)英語同時通訳:新潟工科大学国際交流顧問
判澤純太
【ご講演要旨】
(1) 柏崎は第2のhome town
「~ここは串本、向かいは大島、仲を取り持つ巡航船、~アラヨイショ」と歌われる串本は、人に知られる海の難所。ここで1890年オスマントルコ帝国親善使節の軍艦エルトゥルル号が遭難し600余名のトルコ兵を満載していた。
自らの命の危険を顧みずに遭難者たち50名近くを命懸けで救ったのが串本漁民であったが、話はそこで終らない。数年後同地を訪れたジャーナリストが、句碑を見つけて村人に尋ねた。トルコ兵殉難の供養碑と書かかれている事を知り、線香と献花が絶やされず、慰霊祭も毎年催されている事を知って、そのトルコ人(イスラム教徒だが)は感涙にその場に泣き崩れた。
そのエピソードがトルコ本国に伝わって、小学校の教科書にまで載せられ、トルコでは孫、子の代に伝えている。トルコ人の親日感情の底には、このエピソードが有る。
私は今日、柏崎に来ているのに、まるで和歌山の串本にいる様な気持ちです。かっての柏崎トルコ文化村の縁(えにし)で結ばれた心の安らぎに包まれています。柏崎はトルコ人にとって、第2の串本です。国同士の信用関係は、地理的な距離ではない、「心の距離」です。
(2) トルコ経済の強みの特徴
EU経済がshrinkしているのに、一方トルコ経済は毎年5%成長を続けています。その秘密は、トルコ経済が多元経済である事に由ります。トルコ経済は、EUとも、中近東とも、黒海、地中海を挿んで、ロシアとも、北アフリカとも、あるいは中国とも、経済提携を幅広く結んでいます。
EU諸国は今迄域内経済ばかりを重視してきました。トルコ経済には、懐の深さが有ります。トルコ経済は今のところ小所帯で、かつ高度経済成長に遅れた事からやむなくそうした面がありますが、今では大変な強みになっています。
今迄は、中国に仲立ちを頼んで、日本との通商が有りました。今トルコは、直接日本から投資を呼び込みたいと本気で決意しています。それが今回の、トルコ国内での「投資促進法」採択なのです。同法は、トルコ経済の安定的急成長が、自信の裏付けになっています。
トルコの商務大臣が玄場外相、枝野経産相と、数日前にお会いしているのも(本日出席の2人もその場にいましたが)、日本と、近い先々にFTA、EPAを締結しようと視野に入れているのです。
日・土関係では当面トルコの入超ですが、通商規模は限りなく拡大していけ、しかも両国は win-win関係の条件の環境にあります。
景気の勢いを企業は見逃しません。日系大手企業も、数百社がすでにトルコに事業所を展開していますが、その勢いは益々加速するでしょう。その理由をお話します。『日経新聞社』が支局を置いている場所は、カイロ(エジプト)とイスタンブール(トルコ)の2個所です。それはすなわち、その2局に、ヨーロッパ、中東、ロシアの政治、経済、投資情報の、最も核心的な情報が集まるからなのです。それは、とりもなおさず、トルコ経済が将来の成長センターである見通しを象徴しているのです。
日本は産業技術水準で世界のトップを走っている先進国です。ただし、技術力の高さだけでは、今後の企業国際展開は飛躍しません。進出する当地の市場(マーケット)を知り尽くし、当地で、歴史的信用(prestige)を持っていなければならないのです。
トルコにはそれ(後者)が有ります。
日本の方々が、トルコ1国への投資、企業進出を勧められているとお感じになっているとしたら、それは当たっていません。上にもお話いたしました様に、トルコへの投資は、EU、ロシア、中近東、北アフリカへの、もっとも安全で、賢明な国際間接投資になっているのですから、日本とトルコが実りあるタッグ・チーム(FTA、EPA)を組めれば、将来性は無限大に広がるでしょう。
(3) 2つの外交軸(メガロポリス・中央官冀外交とhometown friendship diplomacy)
功利主義にベースをおいただけの外面だけの関係では脆いのです。お互いの国同士がえもいわれぬ暖かい感情を抱き合う関係が、最良の国際関係です。
もっとも強い国際関係は、政治、経済、文化交流が「3位1体」の、平和で円滑な関係です。産・官・学の機関でその絆をつなぎ、維持する事です。
ただし、もう1つ、魂が安らぐsmall,local townが、相手先に確保出来ればどんなに相手国に対する信用性が高まって素晴らしいでしょう。それは、交流の第2 軸となり、それによって、第1軸を一層強靭にできます。柏崎がトルコ人に対して、その資格と能力を十分に備えている事を私は知っています。両者の友情と交流がさらに積み重ねられていく事を、私は願って已みません。
企業進出、投資に関して、大規模なものばかりをトルコ国が望んでいる訳ではあ りません。先にも申し述べました様に、「地方」との交流の拡大は、交流の「信用性」を高めますし、産業のノウハウは、中央と、中央官冀が独占物にするものでは ない事も、我々トルコ人はよく知っています。日本では「地方」にも、豊富な先端の産業技術があります。投資資本も豊潤に有ります。
柏崎商工会議所から東京のトルコ大使館宛てに申し出て戴ければ、トルコ側は取り急ぎ、何度でも特別商業ミッションを柏崎に派遣して、投資、企業進出に就いて、トルコ国内関連法規に関る詳細な資料をお持ちしてご説明できます。その場合、出 張交通費はトルコ側の負担で結構ですし(笑)、トルコ側で通訳も準備して、連れて参りましょう。
(4) ツーリズム(観光産業)振興の夢
現在年間2万人の日本人観光客の方々に、トルコ観光に訪れて戴いております。
より一層幅の広い、各層相互「日・土」交流が進展する事を、心から願っています。
トルコの地理と歴史は大変魅力に富んでいます。ボスポラス=ダーダネルス海峡を挟んで、トルコはヨーロッパにも、アジアにも国土を持っています。
私は日本人の皆様方に、特にトルコの何を知って戴きたいのでしょうか?
トルコが、将来EUのメンバー国になったとしても、トルコはトルコであり、ほかの何者でもない、ということです。明治維新を経た日本が、日英同盟があっても 戦後に日米安保条約があっても、イギリスでもなければアメリカでもなく、日本で あり続けているのと、それはまったく同じことです。
その辺の所を、日本国民、トルコ国民の双方が、もっともっと観光を通じて学び 合えたら素晴らしいと思いませんか?
(5) 3人のキー・パーソンの方々in Kashiwazaki
私は、今回お招きしていただいて、海上花火も見れますし、大変喜んでおります。と、同時に、上に述べて参りました様に、今回のお招きのご縁を、トルコ政府代表として、大変重要視している事もお伝えします。
今回のこのご訪問の機会を先頭に立って準備していただいた方は、高橋さん(柏崎トルコ友好協会会長)、西川会頭(柏崎商工会議所)、会田市長様でした。
そして支えて戴いているのは、ご参集下さった皆々様方です。
今後とも皆様のご支援を何卒頂戴いたしたく存じます。本日はどうもありがとうございました。
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